代表メッセージ

どれが究極の治療法なのか?
 多くの人たちを苦しめる,がんや関節リウマチ。
このところバイオ医薬品の活躍が目立っている。

分子標的抗体,免疫チェックポイント阻害抗体,CAR-T細胞治療・・・
ハーセプチン®は年間1万人以上の乳がん患者に投与され,著しい治療効果を上げているが,HER2陽性の患者は乳がん患者全体の30%に満たない。残りの乳がん患者を救える分子標的抗体はまだ出てきていない。

一方でオプジーボ®やキイトルーダ®などの免疫チェックポイント阻害薬という新しいがん細胞攻略法が出てきた。従来にない著効を示した免疫チェックポイント阻害薬はまたたくまに全世界に広がった。しかし治療例が増えるにつれ,全く効果の上がらないケースも多く報告されてきている。

次に新しいがん治療法であるCAR-T細胞治療法が出てきた。T細胞のがん細胞への攻撃力を組換え遺伝子導入技術によって強化させて治療するという細胞治療法である。がんが完治する例が次々と増え,血液がんだけでなく固形がんにも効果があることがわかってきている。しかし,その治療費は薬価の常識をはるかに超えており,広く使われるようになるためには相当な年月がかかると見込まれる。

バイオ医薬品が,がんやリウマチ,難治疾患治療の主役となることは間違いない。しかし,どれも完治を保証するまでに至っていない。重篤な副作用や莫大な治療費という大きな壁にもぶつかっている。やはり低分子薬を選択せざるをえないのであろうか?

困難が多いほどチャンス
 究極の治療薬と言われてきたバイオ医薬品において期待を裏切る治療結果や重篤な副作用を目の前にすると,このまま開発を続けていいのかと躊躇してしまう。

そうではない。失敗や問題が明らかになったことは,前進である。生命活動について,その主体である我々人間の知りうる情報はほんの一握りにすぎない。むしろ生命活動や疾患の本質がその問題の中に隠されているとみるべきである。病気の原因に多様性があることがわかってきたので,治療も多様化に向かうべきである。

がんが分子標的薬のみで治療効果がでないのであれば,他の薬剤との併用を考える。免疫の本質が明らかになれば,CRSという重篤な副作用に対してはサイトカイン中和抗体で副作用を抑える。どの治療がいいかではなく,どの組み合わせがいいかを考えるべきである。

遺伝子組換え技術および細胞培養技術はバイオ医薬品製造の基幹技術であるが,専門性が高く,誰でも使いこなせる技術ではないが,それらの専門技術を最大限に駆使しないと先端バイオ医療を行うことができない。

いちど,固定観念や既存の専門性から脱却して,病気の本質に向き合うことだ。

目の前に立ちはだかった問題の奥に潜む生命活動の本質を見抜くことができれば,きっと前進する。
                       

                                   代表取締役 岡村 元義